使えない弁護士特約?自動車保険の闇?
週刊FLASH(2022年3月8日号)に、自動車保険の弁護士特約についての、興味深い記事が掲載されました。
自動車保険選びの参考になりそうな内容なので、ご案内します。
《記事の概要》弁護士が引き受けたがらない自動車保険がある!
記事の概要
この記事では、とあるベテラン弁護士による次のような証言が、匿名で掲載されていました。
ちなみに、アクサ損保とアクサダイレクトは、同じ会社です。
弁護士から評判が悪いとされる3つの自動車保険
この記事でやり玉にあがっていたのは、次の3社です。いずれもダイレクト損保です。
タイムチャージ(弁護士費用を時間給で算出する方式)に対応していない。 | |
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とにかく値切る。 |
タイムチャージの仕組みは、このページの下方で解説しています。
弁護士特約は、一見どれも同じに見えるけれど・・・
損害保険会社のウェブサイトやパンフレットの商品説明では、どの自動車保険の弁護士特約も、ほとんど同じに見えます。
しかし、もうけている弁護士(=腕のいい弁護士、実績のある弁護士)が引き受けてくれないとしたら、その損害保険会社の弁護士特約は、実質的に品質が低いことになります。
弁護士特約の基本(どんなときに、どんなことをしてくれるのか?)を確認
現在販売されている弁護士特約には、自動車事故用のものと、日常生活の事故用(自動車事故を除く)のものとがあります。
ここでは、自動車事故用に限って説明します。
どんなときに役立つ特約か?
自動車保険の商品説明を読むと、弁護士特約が役立つ例として、もらい事故(=こちらに過失がない事故)があげられています。
もらい事故のとき、損害保険会社は示談交渉できません(法律で禁じられています)。よって、加入者は自分で交渉するか、法律の専門家等を雇わなければなりません。
弁護士特約をつけていたら、法律の専門家への依頼費用が補償されます。
どんなことをしてくれる?
ほとんどの自動車保険で、1回の事故につき、一人あたり300万円まで、弁護士等への依頼費用が補償されます。
ただし、弁護士等の言い値が補償されるわけではありません。各費用ごと(着手金、報酬など)に、適正価格であるかを損害保険会社がチェックします。そのため、この記事のような弁護士との衝突が生じます。
この他に、法律相談費用(単発の相談費用)が補償される商品も増えています。
わたしたち消費者は、どう対応すべきなのでしょうか?
品質が多少低くても、価格が見合っているならば検討の余地はある、というのがこのサイトの考え方です。
弁護士特約の手厚さは、保険料でわかる?
本来、弁護士特約の保険料は、弁護士費用の実態を踏まえて決められるはずです。とすると、特約の手厚さが同じくらいなら、特約保険料も近い金額になるはずです。
週刊誌の記事で、弁護士に好評とされていた東京海上日動、三井住友海上の特約保険料(年払い)は次のとおりです(2022年3月時点)。
東京海上日動 | 2,990円 |
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三井住友海上 | 3,120円 |
どうやら、年に3,000円前後が相場のようです。
ご参考までに、他の3つの自動車保険の特約保険料を調べました(チューリッヒは「スーパー自動車保険」の方です)。
アクサダイレクト※ | 3,920円 |
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ソニー損保 | 2,240円 |
チューリッヒ | 3,910円 |
なお、アクサダイレクトの弁護士特約は、日常生活の事故も自動セットされています。自動車事故だけの金額は公表されていませんが、他社と比較した印象では2,500円程度と考えられます。相場より安いです。
ソニー損保の特約保険料がかなり安いです。ケチケチしているのは納得できます。
チューリッヒ「スーパー自動車保険」は、相場より900円も高いです。高すぎる価格設定では???
そもそも弁護士費用は適正なのか?
この記事は、もっぱら弁護士側の主張が繰り広げられています。
読後に浮かんだ素朴な疑問が「そもそも弁護士費用は適正なのか?」です。
弁護士費用の算定基準
弁護士の料金は、弁護士がそれぞれの判断で設定できますが、最低限度の目安として、日弁連がLAC基準(ラック基準)を定めています。
LAC基準(ラック基準)には、2つの料金体系があります。
- 着手金10万円+報酬金(成果の16%)
- タイムチャージ(時給2万円)
上の方の基準は、成果によって金額が変動するので、高いか安いかを一概に言いにくいです。
しかし、下の方のタイムチャージの、時給2万円というのは、庶民の感覚から言うなら、ボッタクリ級です。
損害保険会社が値切るのは当然?
損害保険会社は、示談交渉を日常業務の一つとしておこなっているので、仕事の内容やコストをわかっています。
わかっていて、弁護士からの請求にツッコミを入れています。
とくに“もらい事故”はこちらが無過失の事故なので、普通に考えると、示談交渉しやすい事故です。責任割合はすでに100対0と決まっていますし、損害の大きさは依頼人からの報告を受けるだけ。簡単そうです。