大手損保グループのダイレクト損保の明暗クッキリ
この数年で、大手損保グループに属する3つのダイレクト損保の明暗がはっきりしてきました。
最近公表された2022年度の決算報告を踏まえて、3社の状況を解説します。
大手損保グループのダイレクト損保に共通する強み
大きなシェアを誇る3大損保
ダイレクト損保の中で、大手損保グループに属しているのは、次の3社です。
〔イーデザイン損保〕 | 東京海上グループ。 他に、東京海上日動、日新火災海上。 |
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〔セゾン自動車火災〕 | SOMPOグループ。 他に、損保ジャパン。 |
〔三井ダイレクト損保〕 | MS&ADインシュアランスグループ。 他に、あいおいニッセイ同和、三井住友海上。 |
3グループの市場シェア
東京海上グループ、SOMPOグループ、MS&ADインシュアランスグループの年間売上高の市場シェアは下のようになっています。
3グループで、約86%のシェアを握っています。
大手損保グループに属している強み
規模の小さなダイレクト損保にとって、資金力の大きな企業グループに属していることは強みになります。しかし、大手損保グループという後ろ盾がいることのメリットは、資金力だけではありません。
下図は、イーデザイン損保のウェブサイトから引用した、事故トラブル対応体制イメージです。
図の中に、3つの東京海上グループの会社名があります。このように専門会社を作ることで、事業の効率化を図っています。
逆の見方をすると、このような仕組みのおかげで、イーデザイン損保は東京海上日動などと共通のサービスネットワークを活用できます。この点も、大手損保グループに属することの大きな強みです。
もちろん、セゾン自動車火災や三井ダイレクト損保も、同じような恩恵をグループから受けています。
ここ数年で、大手損保グループのダイレクト損保の明暗がクッキリ
イーデザイン損保、セゾン自動車火災、三井ダイレクト損保の自動車保険の売上高の推移を、グラフにまとめました。
2018年度は3社の間に大きな差はありませんでした。
ところが、セゾン自動車火災だけが躍進し、残りの2社は停滞しています。
セゾン自動車火災が好調な理由を分析
ここ数年の売上高伸び率
2019〜2022年度の、前の年度に対する売上高の伸び率は、次のように推移しています。
年度による違いはありますが、平均して年に10%以上の伸び率です。これは業界トップの伸び率です。
商品コンセプトを堅持
消費者の立場から見る限り、ここ数年、セゾン自動車保険の自動車保険販売戦略に、大きな変化は見られません。
むしろ、「おとなの自動車保険」のコンセプトや強みを、2011年の発売から堅持しているように見えます。
とは言え、ライバルたちは次々と手を打ってきます。コンセプトや強みを保ち続けるには、努力や工夫が必要になることでしょう。
下のグラフでは、セゾン自動車保険「おとなの自動車保険」の主戦場である“おとな世代”の保険料を、安さを売りにしているSBI損保と比較しています。
ほとんど差がありません。ライバルの動向をにらみながら、消費者が安さを実感できる価格設定に実現していることがわかります。
保険料に差がないなら、セゾン自動車火災の大手損保グループという肩書が効きそうです。
ちなみにSBI損保も、セゾン自動車火災ほどではありませんが、売上は好調です。
イーデザイン損保の現状分析
ここ数年の売上高伸び率
2019〜2022年度の、前の年度に対する売上高の伸び率は、次のように推移しています。
売上の伸びは年々鈍化していましたが、2022年度にマイナスの転じてしまいました。しかも、下げ幅は大きいです。
イーデザイン損保は、2021年11月に新商品『&e』を発売し、その数ヶ月後に保険料を改定(値上げ)しました。それらが不評だったようです。
目先の売上に執着していない
イーデザイン損保や東京海上グループの動きを観察していると、目先の売上高にさほどこだわっていないようです。
東京海上グループ(東京海上ホールディングス)は、イーデザイン損保の新商品『&e』発売と同じ日に、グループ内でのイーデザイン損保の役割についてのニュースリリースを出しています。
そこには、次の2つのことが書かれています。
- イーデザイン損保は、グループの中で、デジタル技術活用の尖兵となる。
- 新商品『&e』は、その第一弾である。
逆に言うと、通販市場をどう攻略するかというようなことには、触れられていません。
イーデザイン損保の売上高は、東京海上グループの中で約0.7%にとどまっています。グループへの影響は微々たるものです。
売上を少しくらい増やすより、デジタル技術の実用化や検証に取り組むほうが、グループへの貢献は大きい、という考えでしょうか・・・?
価格競争に距離を置いている?
目先の競争から距離を置く姿勢は、新商品『&e』の保険料にあらわれているようです。
『&e』においては、ダイレクト型自動車保険につきものとも言えるインターネット割引がありません。
この割引には、次のような特徴があります(詳細は商品ごとに異なっています)。
- 割引額が大きい。
- 1年目の割引が大きく、2年目以降は小さくなる。
インターネット割引を無くすと、1年目の保険料が実際以上に高く見えてしまいます。
試しに、『&e』を含めた5つの自動車保険の保険料を比較してみました。2年目は無事故で更新したものとします。
1年目の保険料は、『&e』が最も高くなりました。他の4つはインターネット割引が効いています。
2年目になると1等級上がるので、『&e』の保険料は少し安くなっています。他の4つは、インターネット割引がダウンするために、保険料は逆に値上がりしています。
その結果、『&e』より安いのは1社だけになってしまいました。この構図は3年目以降も続きます。
こうしてみると、『&e』の保険料設定はそんなに高いわけではありません。しかし、1年目に高くなると、どうしても敬遠されやすくなります。
そんなことは、イーデザイン損保だってわかっているはずです。それでもインターネット割引を廃止したのは、価格競争(安いように見せかける競争)から距離を置くという意思表示のようにも見えます。
『&e』に加入すると、全員に“安心センサー”が配られます。
当然“安心センサー”にもコストがかかっているでしょうから、1年目に大きな値引きをやりたくないのかもしれません。
三井ダイレクト損保の現状分析
ここ数年の売上高伸び率
2019〜2022年度の、前の年度に対する売上高の伸び率は、次のように推移しています。
4年度のうち、3つの年度で前年よりダウンしています。三井ダイレクト損保は、10年ほど前からこのような状況にあり、長期低迷状態にあると言えます。
特徴の乏しい商品性
こうした現状に対して、三井ダイレクト損保はいろいろと手を打っているようですが、物足りなく感じることが多いです。
下のグラフは、上でご覧いただいた5社の保険料比較です。
これを見ると、三井ダイレクト損保の保険料は、1年目は2番目に安く、2年目以降は最も安くなっています。
上のグラフからわかるように、三井ダイレクト損保の保険料は、なかなか良心的な設定になっています。
しかし、安さに定評のある商品と比べると、物足りません。次のグラフは、やはり上でご覧いただいた「おとなの自動車保険」とSBI損保を比較したグラフに、三井ダイレクト損保の保険料を描き足したものです。
三井ダイレクト損保の保険料はけっこう安いけれど、保険料の安さを重要視する方々にお勧めできるほどではないというところです。
保険料水準に限らず、三井ダイレクト損保にはこういうところが多いような印象です。
MS&ADグループはどうしたい?
上のイーデザイン損保と同じく、三井ダイレクト損保の売上高も、MS&ADインシュアランスグループグループの中では微々たるものです。
それでも、東京海上グループには、イーデザイン損保のこれからについての意志がハッキリと感じられます。
一方、MS&ADインシュアランスグループグループの方は、そのような意志を感じ取りにくいです。もしかしたら、下のようなことがあるのかもしれません。
- ツートップ(あいおいニッセイ同和、三井住友海上)体制であることが裏目に出て、三井ダイレクト損保の将来像をグループ内で一本化できていないのでは?
- もともと三井ダイレクト損保を立ち上げたのは三井物産なので、思い入れが乏しい?(現在はグループの完全子会社)
これらはゲスい詮索でしかありませんが、こんなことを考えてしまうくらいに、低迷状態が長引いています。
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